松崎淳 ホームページ www.matsujun.com
政策 政策提案

調査箇所 太平洋セメント(株)大分工場
調査日 平成18年2月9日(木)

太平洋セメント(株)大分工場


1 目的

太平洋セメント(株)大分工場は、年間約600万tを生産する国内第2位のセメント工場である。国内有数の石灰石鉱山と良好な港湾に恵まれ、国内トップクラスのセメントを輸出し、また産業廃棄物の利用においても特徴ある処理体制を構築している。特に木質バイオマスにおいて、国の「木質バイオマス資源多角的利用促進緊急対策事業」の補助を受け、資源利用施設を稼動させ、セメント製造過程において、建設発生木材、間伐材及び製材端材等の未利用木質資源をバイオマス燃料として利用し、また燃料として使用した後の灰はセメント原料とするなど、循環型社会への実現に取り組んでいる。
本調査は、これら木質バイオマスなどの新エネルギー活用の取組を調査することにより、本県における新エネルギー関連施策についての検討に資することを目的に行った。

2 工場概要

太平洋セメントは平成10年10月1日、秩父小野田セメントと日本セメントとの合併により誕生した会社であり、大分工場は安定して良質な石灰石を採掘できる願寺鉱山と重要港湾の指定を受けた天然の良港を配したセメント工場である。

設立年月 1919年10月
敷地面積 630,440m2
生産高 627万t/年(16年度実績)
出荷先 国内:304万t 輸出:323万t
生産能力 18,900t/日
廃棄物利用 原料代替 108万t
燃料代替 13.4万t
(廃油・廃液、廃プラ、廃タイヤ、RDF、木質バイオ、廃畳)※木質バイオ 2.4万t

3 石灰石生産とセメント製造工程

セメントは酸化カルシウム、二酸化けい素、酸化アルミニウムなどを主成分とし、これらの成分を含む石灰石、粘土、けい石、鉄原料が原料として用いられる。
大分工場では、主原料である石灰石を願寺鉱山から採掘し、2つの立抗から長距離ベルトコンベアーで工場まで運ばれる。願寺鉱山は、推定埋蔵量45億tでこれから150年は採掘可能といわれ、全国の約1/6の石灰石が採掘されている。
工場に運ばれてきた石灰石などの原料は、適切な比率で混ぜ合わせ、決められた化学成分になるよう調合・乾燥した上、原料粉砕機で更に粉砕して微粉末にする。
微粉末にされた原料は、1,450℃という高温で焼成し中間製品であるクリンカを製造する。この工程で単なる混合物であった原料が高温によって化学変化を起こし、水硬性(水で固まる性質)をもった化合物に変化する。焼成工程は、まず熱交換器(サイクロン)で800〜900℃に予熱され、ローターリーキルン(セメント焼成炉)に送られる。キルンは直径6m、長さ100mの円筒形で、出口に向かって2度の角度で傾き、回転させながら原料の温度を徐々にあげ、出口付近で1,450℃になり焼成される。その後、生成物である化合物は急激に冷却され、火山岩のような黒い塊のクリンカが生成される。このクリンカをまた粉砕し、セメントの硬化速度を調節する石こうを加えて、最終製品であるセメントが製造される。

4 総合廃棄物リサイクルシステム

上記のセメント製造工程において、1,450℃という高温で連続処理を行うことから、これを利用して多種多様の廃棄物処理が可能となる。セメント工場における廃棄物使用の特色は次のとおりである。

(1) 大量の廃棄物等が使用できる
セメントに必要な、カルシウム・シリカ・アルミナ・鉄などの化学成分を含んでいれば原料として使用でき、また燃えるものはすべて燃料として使用できる。
(2) 焼却残さがでない
灰は原料としてクリンカに取り込まれるため、焼却灰が残らない。
(3) 有害物質が無害化できる
1,450℃の高温であるためダイオキシン等の有害物質を分解し、発生させない。
主な、廃棄物としては、廃タイヤ、廃プラスチック、焼却灰、建設廃材などの産業系廃棄物や一般家庭の都市ごみ、下水汚泥、及び一般廃棄物を固形燃料化したRDF(Refuse Derived Fuel)も焼成用補助燃料として使用している。

5 木質バイオマス利用設備

廃棄物リサイクルシステムのうち、これまで廃棄物として焼却されていた製材の端材や未利用のまま山林に放置されている間伐材及び建設発生木材などをセメント製造で燃料して活用するのが、木質バイオマス利用設備である。
この事業は、大分県の指導のもと林野庁が進める「木質バイオマス資源多角的利用促進緊急対策事業」による補助金を受けて、平成14年12月に稼動を開始した。大分工場の事例が同制度の補助を受けた全国初の木質バイオマス設備である。
木質バイオマス利用設備設置事業費は6.9億円であり、うち国の補助額は2.3億円である。
この設備は木材をチップ化する木材破砕設備と、チップ化した木材をキルンに投入する設備からなり、これにより年間約24、000tの木材を受入れ、石炭の代替燃料として活用している。
利用設備は、工場に隣接する石灰石採掘跡地に木材破砕設備を建設し、運び込まれた木材を一次、二次の二段階で破砕し、鉄くずを選別し木材チップ化し、キルンに運ばれる。処理能力は毎時20tであり、1日15時間で300t、年間で約10万tの処理が可能である。

6 質疑応答

質 疑 廃棄物を有効利用するという社会の流れの中で、会社としてのコストの面、経済的な効率、利益に対する還元の現状についてどのようになっているか。また、今後の展望もあわせてお伺いしたい。
回 答 企業活動の中で、循環型社会への貢献は必要なものと考えている。廃棄物を処理するに当たってはそれに準じた専用設備を設置しているため、まずその導入コストがペイできるかが、分岐点と考える。そこで処理費として、人件費と設備費をご負担いただきながら、排出負担としてお願いし、排出者との協議の中でそれぞれのメリットを出し合いながら検討している。
廃棄物処理における品質への影響は、セメント製品として安定的に大量供給しなければないないという使命のもと、品質についてJAS及び社内規定に基づいて管理し、セメント成分の代替になるという前提で受入れ、それを逸脱した物を受入れるわけにはいかない。
また、地元の中で生産活動を続けることで、騒音や粉塵の問題は現時点でも発生する可能性があるが、新たな問題を発生させないということが大原則であり、特に最近は下水汚泥など臭気の問題について、室内を負圧するなどで、対策を講じている。
これらの対応を総合的に勘案して、経済的にも持続してできるかどうかが問題であり、そういうことを乗り越えた上で、将来的に省資源という形の中で効率化を図っていきたいと考えている。
質 疑 木質バイオマス利用において、木材の受入状況はどのようになっているか
回 答 受入量について、16年度は年間24,000tの木材を受け入れ、その内訳は約95%が建設用廃材で、その他は製材・家具廃材、ダム流木、間伐材である。17年度になって、県内でも他のメーカーなどが木質バイオマス設備を設置しており、木材の受入状況が厳しくなり、競争が激化している。県内の日田市で木質バイオによる発電設備の建設が行われている。
質 疑 木質バイオマス設備に約7億円の初期投資をし、運転コストもかかる中で、2,400tの建設用廃材や間伐材を受け入れるということであるが、今後も安定的供給が必要であると考えられる。競合はもちろんあるとしても、安定的供給に対する見通しはどうなのか。
回 答 競合がある中で非常に厳しく、単価の話もあり赤字覚悟で受け入れることもあり得る。受け入れる木材の形態はいろいろで、間伐材も木の根っこなどさまざまの品質があり、発電用途であると非常に品質を問うことになるが、セメント工場ではある程度の幅の品質でよいという柔軟性があることが強みである。
質 疑 なぜ今そんな競合が激しくなってきたのか
回 答 石炭・石油価格が上昇したことにある。セメント製造での燃料代は安いが、エネルギー費のかかる産業の打撃は大きいはずである。
質 疑 (株)デイ・シイ川崎工場では、同様な取組を行っているのか
回 答 旧第一セメントの川崎工場であるが、都市部での立地のため廃棄物を処理するニーズは高く、木質の利用は承知していないが、いろいろな廃棄物の処理を行っている。
質 疑 コストの話について、処理費をいただいて処理をしているということであるが、従来は石炭を買っていたのに、その代替として、木材やRDFなどを補助燃料として使っているとのことだが、石炭も混ぜて利用をしているのか
回 答 石炭は従来どおり利用しているが、工程的には難しいので、混合させて利用はしていない。廃棄物は別ルートを設けて、石炭の代替で利用している。
質 疑 そうすると受け入れた廃材などでどのくらいの燃料を賄っているのか。
回 答 廃材の供給を受ける立地条件などによりその割合は決まってくる。立地条件がいいと30%程度の代替が可能であるが、当工場は20%程度である。その他は従来どおり、石炭、コークス、重油などを利用している。
質 疑 もっと、建設用廃材など木屑が使えるようにになると、コスト的には、石炭を燃料として買っていたものが、お金をもらって廃棄物を処理することになるので、コストダウンできると考えてよいか。
回 答 木質バイオマス利用設備の建設コストがペイできればコストダウンに繋がる。燃料代替の割合の上限がいくつにすべきかという理論上の数字はないが、各社の状況をみると50%程度くらいまでは可能ではないかという考えはあり、そのためにはいろんな整理や工夫が必要であると考える。
質 疑 間伐材の利用割合が数%と非常に少なく、廃棄物と異なり供給できるまでのコストがかかるはずであるが、状況はどのようになっているのか。
回 答 国の補助制度の目的は、間伐材の利用促進であることから、間伐材は購入し利用している。目的を達成させるという観点からすると現実的には難しくいろいろな課題があると考える。

7 関連項目

(1) 日田市内木質バイオマス発電システムについて
エスコ事業を中心とした総合エネルギーサービスにより、エネルギー問題を中核とした地球環境問題の具体的な解決策を提供している(株)ファーストエスコ(東京都中央区、平成8年5月設立)が、大分県日田市において木質チップを利用したバイオマス発電事業を行うため、平成17年7月に同市内ウッドコンビナート17区に発電所の建設を開始した。
当事業は、100%子会社の(株)日田ウッドパワーが着手し、使用燃料である木質チップは、特定非営利法人日本樹木リサイクル協会の会員企業が日田市に設立した(株)九州ウッドマテリアルを通じて協会会員網から長期安定確保を図る計画である。
(株)ファーストエスコは、日田市の他に木質バイオマス発電所の建設を山口県岩国市(18年1月運転開始)、福島県西白川市大信村に進めているが、日田市の計画は木質専焼の発電所として国内最大規模となり、得られた電力はRPS法に基づき電力会社に買電される。

施設概要
発電出力 12,000kw
敷地面積 20,440m2
雇用人数 14名前後
総事業費 45億円
燃料種類 木質チップ
(建設副産物系6割、生木系4割)
燃料使用量 年間約10万t
建設着工 平成17年7月
運転開始 平成18年11月予定

※日田市バイオマスタウン構想
地元日田市では、平成17年5月に「日田市バイオマスタウン構想」を作成した。日田市の人口は約77,000人で市域面積は666km2の82.8%が林野で占められている大分県の西部に位置し、西は福岡県、南は熊本県に接する盆地と山地からなる市である。
同市は、平成10年12月のISO14001の取得を契機に、資源循環型社会への移行を目指しており、農畜産業と林業などを中心産業とする中で、これらの産業から発生する、家畜排せつ物、木質系廃棄物及びビールかすなどの未利用バイオマスを有効利用する構想が策定された。
この構想のうち主なバイオマス利用は次のとおりである。
@ 豚糞尿・生ごみ(食品廃棄物)・農業集落排水汚泥
A 製材所等残材・建設発生木材・林地残材
B ビールかす
C 家畜排せつ物
D 下水汚泥
E し尿・浄化槽汚泥
このうちAの木材の利用に関しては、上記の発電所建設を誘致事業として位置付け、年間10万tの木質チップを次の割合で提供することを想定している。
製材所・市場等の端材 27,096t/年(このうち再生紙利用、ウッドトイレなど木製品加工利用は除かれる)
建設現場等からの建設発生木材 1,416t/年
山林からの林地残材 21,143t/年
これらにより地元日田市内から約5万t近い木質チップを受け入れ、その他は、他地域から提供を受けることになる。
(2) (株)デイ・シイ川崎工場について
川崎区浅野町に位置し首都圏に立地する唯一のセメント工場であり、年間約150万tの製品を出荷している。
大分工場と同様に廃棄物の受入れによる環境リサイクル事業を展開しており、年間25万tの廃棄物処理を行っている。処理能力は日量3,300t年間約100万tが可能であり、現在の処理している廃棄物の内訳は、燃え殻、汚泥、廃酸、ゴミくず、廃プラスチックなどである。

8 調査結果

太平洋セメント(株)大分工場では、セメント製造過程における1,450℃の高温を利用して廃棄物処理を行っている。セメント製造において、原料としての代替及び燃料としての代替を行い、燃料代替にあっては20%の実績があり、地球温暖化に寄与している。
また、国の補助を受け木質バイオマス利用施設も設置し、建設用廃材を中心とした木材チップの利用を行っている。ここで、廃棄物は処理費をもらって受け入れているが、間伐材は買入れをしなければならないという問題を残している。
また、県内では木質バイオマスを利用した電力発電所の建設も始まり、建設廃材を中心とした木質廃材の受入れに関する競争が起きていることもわかった。
この調査により、木質バイオマスを利用する現状と問題点がわかり、本県における新エネルギー関連施策の検討に資することができた。

キルンがメンテナンス中のため、
処理されずに山積みにされている木材
粉砕設備の中で一次粉砕機に投入される木材
二次粉砕機 粉砕された木材チップの山
実際の木材チップを手に取る 良質な石灰石が採掘可能な願寺鉱山

以上




お問い合わせ アクセスMAP
ホーム
プロフィール
政策
・基本政策
・実現した政策
・議会改革
・政策提案
・活動報告
県議会報告
・厚生常任委員会
・予算委員会
・環境農政常任委員会
・産業振興特別委員会
・文教常任委員会
・青少年総合対策特別委員会
・次世代育成特別委員会
・防災警察常任委員会
・本会議関係
・決算特別委員会
・商工労働常任委員会
・かながわ再生特別委員会
海外報告
・国務省招待による訪米
・シンガポール視察
・スウェーデン福祉視察
・フィンランドIT視察
・英国調査報告
・フランス調査報告
・韓国訪問レポート
アーカイブ
リンク集