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福祉大国スウェーデンのすがた

政府への信頼を維持するスウェーデン社会
 スウェーデンは一般に高福祉高負担の国といわれます。
同国の国民負担率(国と地方を合わせた税負担と社会保険料の合計が所得全体に占める割合)は、約70%で日本(約37%)と比べると2倍近くになります。このような高負担の福祉国家は、どうやって成り立っているのでしょうか。
 スウェーデンでは、税や社会保険料の透明性・公平性・公正さが保たれると同時に、高い負担に見合っただけの納得のいくサービスが提供されているのです。一言でいえば、「払っただけのものが返ってきている」という実感が誰にもあるからです。では、なぜ日本ではその実感がないのでしょうか。
  スウェーデン国民は、自国の政府を”Our Government”と呼びます。国民から”Our Government”と誇りを持って呼ばれる国、スウェーデン。高福祉高負担の基礎には、スウェーデン人の政府への高い信頼があるのです。
  スウェーデンにおける政府への高い信頼がどこからくるのかを見つめたいと思います。

分権型福祉社会はコミューンを基礎に
  スウェーデン社会の特色は、「分権型福祉社会」という言葉で表現されます。
  1992年の「エーデル改革」により、スウェーデンでは、それまで何でも国が決めてきた中央集権的な福祉行政を大転換させました。住民に最も身近な基礎自治体である「コミューン」(日本の市町村に相当する)に、大幅に権限を委譲したのです。
  エーデル改革とは福祉行政の地方分権であり、これにより、高齢者や障害者への社会サービスや保健医療の行政サービスが、地方自治体の権限と責任のもとに実施されることになりました。
  全国に289あるコミューンが、自ら30%前後の単一税率で個人所得税を課し、「地区委員会」で予算や事業計画を決定するようになりました。また、保健医療サービスの整備運営も、国が一律に実施するのをやめて、地方行政の広域単位である全国で20の「ランスティング」(日本の都道府県に相当する)と3大地区コミューンが直接責任を負うことになりました。
  さらに、高齢者医療や介護サービス、保育サービスなどの現場には「利用者委員会」が設けられています。施設の運営やサービスの提供に当たっては、利用者の声が反映する仕組みが保障されているのです。保育園を父母の参加のもとで経営することも珍しくありません。
  このように、地域の住民が地区委員会や利用者委員会にただ参加するだけでなく、その意見を反映させた運営を行うことで、「分権型福祉社会」は一気に現実のものとなりました。

エーデル改革による福祉の大転換
  エーデル改革に至るまでの約10年間、スウェーデンでは、議会をはじめ様々な場で、福祉現場の問題を解決するための方法が何度も話し合われました。
  例えば、1980年代における高齢者福祉の問題点とは、@高齢者の社会的入院による財政危機、A福祉行政の官僚機構の肥大化、B看護婦・ホームヘルパーの不足、C老人ホームの不足、D痴呆性老人の居場所がない、といったことでした。
  そこで、エーデル改革が目指した方向は、@在宅医療と在宅福祉、A地方分権の徹底、B看護婦・ホームヘルパーの権限拡大という3点に集約されます。
  実際、スウェーデンでは分権型福祉社会の推進とあいまって、ケア付き住宅や、個室が基本の老人ホーム、福祉施設としてのナーシングホーム、痴呆性老人の共同住宅などが整備されました。これらの90%は個室で、各部屋の80%で専用トイレも確保されています。
  その結果、本来、福祉サービスが対象とすべき高齢者を医療の世界でケアをする、いわゆる「社会的入院」が減少しました。これに伴って、ランスティングの病床数は、88年の10万4000床から99年には3万3000床に激減しました。また、保健医療従事者も85年の41万1000人から99年には25万9000人に減少しました。
  その一方で、家族介護から解放された女性の社会進出は一貫して進みました。スウェーデンでは、育児や介護をはじめとする福祉サービスを提供する分野を中心に、それ以外の労働市場でも大勢の女性が働いています。女性の稼得収入が、スウェーデン社会の高負担の一翼を支えているのです。高福祉が女性に雇用の機会を提供し、所得の増大が高負担を支えるという望ましい経済循環のメカニズムが機能しています。

コミューンを支える制度と自助の精神
  分権型福祉社会を創造するに先立ち、スウェーデンでは1971年、世帯単位から個人単位へと所得税制の改革が行われました。
  累進的な所得税が世帯単位から個人単位となったことで、女性が働きやすくなり、社会への参加が進みました。それだけでなく、福祉の産業化が進展して、協同組合なども小規模のものが地域社会に次々と誕生しました。また、スウェーデンの所得税は、日本と違い地方税です。福祉の負担と給付の関係が、より身近に実感されることとなり、もともとあったコミューンの「自助の精神」をより高揚させることにつながりました。
  スウェーデン人の労働時間は、年間1500時間と日本の7割ぐらいで、年5週間の有給休暇をフルに使う国民です。また、保育園が完備しているのはもちろんのこと、育児休暇の制度や、妊娠、出産その他に社会手当が支給される親保険の制度も整っています。
  さらに、育児休暇とは別に、両親には合わせて15ヶ月の有給休暇が法律で保障され、子どもが8歳までであれば、いつでも取得することができます。うち1ヶ月は父親のために留保されている「パパの月」で、使わないと無効になります。また、育児手当は、子どもが16歳になるまで両親に一律、非課税で支給されます。
  なお、学業を継続する子どもには、学業手当が支給されています。
  コミューンは、子どもたちが定額で利用できる保育施設や放課後の課外活動施設を提供しています。コミューンが民間委託した保育サービスのうち、45%は子どもたちの親が設立した組合によって運営されています。
  以上のような個人単位の税制や広範な社会政策の存在が、社会化された育児や介護の分野に、女性が積極的に働き手として参加していく素地を創ることになりました。いま、スウェーデンの女性の労働力率は75.5%となっています。日本の女性の労働力率は42.5%ですから、わが国とは比べものになりません。スウェーデンでは、7歳以下の子どものいる女性でも72.8%の女性が就労しています。スウェーデンには日本のような女性労働のM字カーブが存在しないのです。

改革を迫られた年金制度
  日本の年金制度は現在、基礎年金部分と報酬比例部分の二階建てとなっています。これは、わが国が1998年改革以前のスウェーデンの年金制度をモデルに、1986年に導入したものです。
  しかし、スウェーデンの場合は日本と違って、保険料の未納による無年金や払込不足による困窮者を出さないように、基礎年金部分(平均賃金の20〜25%=基礎額)に追加して、住宅手当と基礎額の55%の補足給付が加算されてきました。他方、報酬比例部分は原則として現役時代の報酬に比例して支給されていましたが、基礎額の7.5倍を上限とする仕組みとなっていました。
  改革前のスウェーデンの年金制度では、基礎額が物価にスライドし、しかも16歳から64歳までの生産年齢のうちで最も所得の高かった15年間の平均所得を基礎に算定していました。スウェーデン経済が高度成長から低成長に入ると、年金財政を圧迫し、世代間格差が深刻化してきました。さらに、同世代の中でも、長い労働生活でフラットな収入を得ていた人よりも、短期間で成功を収めた人のほうが、生涯所得と保険料が同額であるにもかかわらず、多額の年金を受け取れるという不公平がありました。そのうえ、30年加入で満額支給されるので30年を超えて働いても支給額は増えないことも問題でした。
  スウェーデンの年金制度には、このような問題が是正すべき課題として、存在したのです。

スウェーデン年金改革のポイント
  そこで、スウェーデンでは、1998年にそれまでの年金制度に大幅な改革が加えられました。スウェーデンの年金制度は1999年から再スタートしました。
  年金改革のポイントは、@補足給付のある人と自力で受給する人との不公平を是正する、A全て事業主負担だった保険料を本人も一部負担する、B給付額を拠出建てとして拠出と給付に明確な関係を持たせる、という3点です。
  このため、基礎年金と報酬比例年金の二階建てとなっていた年金制度は、最低保証付き報酬比例の年金に一元化されました。基礎年金を低所得者に対する経済保障としての扶養機能である「最低保証年金」と位置づけています。また、61歳以上であれば、老齢年金の受給開始年齢を個人の選択に委ねることにしました。その目的は、個人の意思を尊重しながら、拠出と給付のバランスをとるとともに、世代間の公平と世代内の公平を図ることです。
  さらに、保険でありながら40%は国庫負担で賄われていた点も改められ、保険財政は自主運営となりました。保険料については、生涯所得の18.5%と定め、16%を賦課方式で運用し、その年の受給者に支払う年金給付に充て、残り2.5%を確定拠出型年金として積立方式で運用することとされています。
  そして、実際に支払われる年金額は、払い込まれた保険料の総額に応じて、まず、生涯の年金受給総額を仮算出し、経済状況と平均余命の変化にリンクさせて、年間の年金受給額を増減させる仕組みを採用しています。
  スウェーデンの年金改革の背景には、年金の負担者に対する受給者の割合が2000年の30%から25年後には45%に達するという急速な高齢化があります。
 スウェーデンの新年金制度には、人口構造の変化に耐えられるような斬新な工夫がみられます。スウェーデンの年金改革が、わが国をはじめ、高齢化が避けられない世界の先進諸国から注目を集めている所以です。



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